フェニックスの火星への道のりを語る。
ここでは、フェニックスの打ち上げから、火星での探査開始までの約10か月の動きについて語ろう。
打ち上げ
フェニックスは、Delta 2925によって、フロリダのケープカナベラル空軍基地から打ち上げられる。
大気圏外でロケットのペイロードから、カプセルに格納された状態のままフェニックスが放出される。
このカプセルをエアロシェルという。

フェニックスのカプセル
出展:Phoenix Mars Mission
ここで誤解してはいけない。
探査機がムキ出しの状態で火星に向かうのではない。
フェニックスは、エアロシェルに格納されたままの状態で飛行を続けるのだ。
太陽電池パネルが展開されると、制御に使用される電力が生成される。
この太陽電池パネルも探査機本体のものではない。
エアロシェロに搭載されたクルーズ用の太陽電池パネルだ。
DSN[Deep Space Network]との通信が確立されれば、姿勢制御、進路調整を経て火星へのクルーズに入る。
クルーズ
クルーズ中のフェニックスの位置はDSNによって常に捕捉されている。
宇宙空間では推進剤を使用しなくても、慣性のみで目的地へと進んでいく。
最初に狙った方向に正確に打ち出してやれば、推進剤を使わずに目的地へと着けるのだ。
しかし、一回の打ち出しでそのまま火星へと一直線で行くことは現実にはできない。
最初から一直線の軌道に乗せることは、非常に燃料を使うために不経済なのだ。

フェニックスのTCM
出展:Phoenix Mars Mission
むしろ、太陽を公転しながら、いくつかの軌道を切り替えながら火星に接近していくのが、燃料節約になるのである。
軌道を切り替は、小型のジェットエンジンを、必要な方向に必要な時間だけ噴射して実施する。
このような軌道制御をTCM[trajectory correction maneuver]という。
TCMは合計6回が計画されている。
最初は目に見えない小さな誤差でも、クルーズ中にが段々と大きくなり狙った軌道からずれてしまう。
だから、時々小型のジェットエンジンを噴射して軌道を修正しなくてはならない。
このような場合にもTCMが実施される。
大気圏突入
着陸までの最大の難所が大気圏突入だ。
大気圏へ突入するためには角度、速度、姿勢の正確なコントロールが要求される。
フェニックスの正確な位置を適時知るために、突入の2週間前からDSNの追跡の間隔が狭められる。
つまり、より細かいピッチでフェニックスの位置を捕捉するのだ。
突入3日前には、最後のTCMが実施されと、大気圏を降下するためのデータが送信される。
大気圏突入の5分前には、クルーズ用の太陽電池パネルが切り離される。

フェニックスの大気圏突入
出展:Phoenix Mars Mission
フェニックスは、エアロシェルの底面を火星の地表へ向けて突入する。
突入中は進行方向の空気が圧縮過熱されるため、エアロシェルの底面が高温にさらされる。
この高温から機体全体を守るため、エアロシェルの底面はヒートシールド(耐熱シールド)になっているのだ。

フェニックスのパラシュート
出展:Phoenix Mars Mission
大気の抵抗を受けて、フェニックスは、降下しながら減速していく。
スピードがマッハ1.7まで低下した時点で、パラシュートが展開する。
その直後にヒートシールドが切り離され、格納されていた着陸脚が準備される。

逆噴射による着陸
出展:Phoenix Mars Mission
地上高1キロメートルになると、パラシュートが切り離され、着陸用のジェットが逆噴射を開始する。
フェニックスは、なおも減速して、秒速2.4メートル(または地上高12メートル)に達すると、降下スピードを一定にして着陸する。
着陸脚の接地部に装着されたセンサーが地面との接触を検知すると、ジェットが停止する。
探査開始
着陸直後に太陽電池パネルが展開され、SSIが上昇する。
MARDIの画像と、降下中に取得したデータが地球局へと送信される。
TEGA、MECA、RACに電源が入り、RAの伸展する。
また、SSIが着陸地点の風景を撮影する。
METが気象データのサンプリングを開始する。