金星スイングバイ
ネタ元:Science@NASA Venus Flyby
出展のリリース日:2007-06-05
30年ぶりの水星探査を目指すメッセンジャー/MESSENGERが金星を通過した。
金星の重力を利用して水星に接近するための加速を得るためだ。
このような意図を持って天体に接近する航法をスイングバイという。
メッセンジャーは単にスイングバイするだけではない。
この機をとらえ、水星探査のリハーサルとして金星の探査を実施するのである。
金星は地球とほぼ同サイズながら、その環境は地球とまるで異なる。
濃い二酸化炭素の大気が充満し、硫酸の雲が上空を多いつくす。
二酸化炭素による温室効果のため、地上は鉛も溶かすほどの高温の世界だ。

MLA
出展:NSSDC
このリハーサルの中で特に興味深いのは、金星へのレーザー照射だ。
メッセンジャーにはレーザー高度計MLAが搭載されている。
これは、もともと水星全域をマッピングするための機器で、地表からのレーザー反射をモニターすることによって、水星の地表の高度測定を目的にしているのである。
このMLAを金星で使用してみようというのだ。
過去に金星にレーザーを照射した探査機はない。
元々、水星用に最適化されたMLAが金星探査でどこまで機能を果たせるかは未知である。
金星は厚い硫酸の雲に覆われているため、地上を見ることはできない。
ところが、この雲は赤外光は透過する性質を持っている。
MLAのレーザーの波長は比較的、この雲を透過するので金星の地表をモニターできるというわけだ。
もし、この試みが成功すれば、今後開発される金星探査機にも同様のレーザー機器を搭載することが有用になってくる。
金星は磁場を持たない。
このため、太陽風が邪魔されることなく金星大気に衝突する。
金星大気上層では水素に対する重水素の比率が、地球に比較して大きい。
これは、太陽風直撃の影響で金星大気上層の水素が弾き飛ばされてしまったからである。
メッセンジャーに搭載されたMLA以外の機器によっても、このような太陽風と金星大気との相互作用の解明が進むであろう。
この金星スイングバイを利用して630ショットの画像が得られたという。
現在、ヨーロッパ宇宙機関[ESA]のビーナスエクスプレスも金星を探査中だ。
メッセンジャーとビーナスエクスプレスの同時探査によって、大気の循環や雲の立体構造などの調査も行われている。