ホーキング織野の

サラリーマン、宇宙る。

テンペル第1彗星を語る。

トップページ太陽系の目次>太陽系小天体[SSSB]>彗星テンペル第1彗星

2005年7月、一枚の写真が新聞各紙を彩った。
NASAの無人探査機から発射された大型の弾丸が、テンペル第1彗星の一部を吹き飛ばした瞬間の写真である。
弾丸を放った探査機の名をディープインパクトという。



テンペル第1彗星
テンペル第1彗星にディープインパクトの弾丸が命中した瞬間
出展:NASA Spitzer Space Telescope




彗星を破壊するという前代未聞の探査計画は、事前に各国の研究機関に通知されていた。

各地の天文台、観測所、大気圏外の宇宙望遠鏡が、破壊の瞬間を撮影するため、テンペル第1彗星に向けられた。



破壊によって飛び散る破片の様子を観測することによって、彗星の組成を究明しよう企てである。

彗星には太陽系の初期の物質が詰め込まれたタイムカプセルである。

組成が解明されれば、太陽系の起源解明に一歩前進できるわけだ。



破壊計画は見事に成功した。
彗星には予想以上にチリが多く含まれ、その代わり氷の成分が少ないことが分かった。

ロシアの占星術師が「破壊でホロスコープが乱された」と主張し、NASAを告訴したというエピソードも話題に幅を持たせたようだ。


この探査計画では、一つだけ誤算があった。
弾丸を放った後のディープインパクトは、彗星に接近し、破壊前後の彗星の様子を克明に撮影する予定だった。
しかし、彗星が吹き上げた破片が、多すぎモウモウとたちこめたため、破壊された痕跡が全く撮影されなかったのだ。


破壊された痕跡の直径や深さは、彗星の構造を探る上で重要なデータとなる。
そのデータが得られていないのは、何とも惜しい話だ。


このため、NASAは探査機をテンペル第1彗星差し向けて、この衝突の痕跡を改めて撮影することを考えた。
しかし、新たに探査機を開発し、打ち上げるにはコストがかかりすぎる。
そこで、任務を終え宇宙空間を漂っている別の探査機をテンペル第1彗星に向かわせることにした。


これに、白羽の矢が立ったのがスターダストだ。
スターダストは2002年に彗星に接近してガスを採集、そのサンプルを封印したカプセルを地球に送り返した探査機だ。


この場合なら、新規開発に比べて15%の費用ですむ。
早速、スターダストのプログラムが書き換えれ、テンペル第1彗星への進路が指示された。


テンペル第1彗星の傷ついた素顔が撮影されるのは、2011年の予定である。
そこでは、45億年前に封印された太陽系誕生の謎を解くカギの一つが見つかるに違いない。


さて、ロシアの占星術師、今度は何と言うのだろう。

このページのTOPへ




スポンサーリンク

参考文献・サイト

NASA Solar System Exploration
Stardust-NEXT Mission Status Report

2008/01/31



スポンサーリンク

Amazon.co.jpアソシエイト



スポンサーリンク

Amazon.co.jpアソシエイト