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フラウンホーファー線を語る。

光の実体は電磁波という波である。
波の頂上から次の頂上までの距離を波長と呼ぶ。

人間の視神経は「波長の違い」を「色の違い」として感じ取るのだ。
視神経が、波長の長い電磁波をキャッチしたとき、人は赤さを感じ取る。



プリズムによる太陽光の分解
出展:The Department of Physics and Astronomy,The University of Iowa

太陽の光がプリズムを通過すると、光が波長ごとに分解され虹のパターンが出現する。

これがスペクトルだ。

太陽の光は様々な色(様々な波長)の光が合成されたものなのだ。



虹は七色と表現するが、太陽光のスペクトルを見ると、七色にくっきりと分かれているのではない。
紫から赤まで色が区切られることなく連続して少しずつ変化する。
このようなスペクトルを連続スペクトルという。


太陽光のスペクトルを精密に観察すると、所々黒い線によって連続スペクトル分断されている部分がある。
ある波長だけ、光が抜き取られているようだ。
太陽光は、連続スペクトルと言いながらも、実は不連続なのである。


このような連続スペクトルを分断する黒い線を暗線、またはフラウンホーファー線[Fraunhofer lines]という。


矢印の部分がフラウンホーファー線
出展:The Spectroscopy Net




フラウンホーファー線は、研究者であるフラウンホーファー[Joseph von Fraunhofer](1787-1826)の名にちなんだものだ。


フラウンホーファーは太陽スペクトルの中に570本の暗線を発見した。
さらに、この中で特に顕著な暗線に対しては、赤色側から波長の短くなる方向にA線、B線、C線、D線、E線、F線、G線、H線、K線と命名した。


ガス体はある特定の波長の光を吸収する。
どの波長の光を吸収するかは、そのガス体を構成する元素で決まる。
連続スペクトルを持った光がガス体を通過すれば、そのガス体を構成する元素に応じた波長が吸収されるので、連続スペクトルにフラウンホーファー線が現れる。


太陽の中心部では核融合反応が起こり、熱と光が放出される。
放出された光は連続スペクトルであるが、太陽の外層のガス体を通過するときに、特定の光が吸収されてフラウンホーファー線が生じるのだ。


吸収される光は元素に固有である。
つまり、フラウンホーファー線を観察すれば、太陽を構成している元素が分かるのだ。(下表参照)
話は太陽だけにとどまらない。
遠方の恒星であっても、フラウンホーファー線を観察することにより、その恒星の構成元素が分かるのである。

フラウンホーファー線元素波長(nm)
A線O2759.370
B線O2686.719
C線656.281
D1Na589.594
D2Na588.997
D3He587.565
E2Fe527.039
F線486.134
G線Fe430.790
H線Ca+396.847
K線Ca+393.368



ここで、注意が必要だ。
A線、B線は酸素による吸収線であるが、これは太陽ではなく地球大気で生じた暗線なのだ。
フラウンホーファーが暗線を研究した時点では、元素による吸収まで理解されていなかったのである。


もう一つ注意事項がある。
フラウンホーファー線のA線、B線・・・K線は、フラウンホーファーが波長の順にアルファベットを割り当てただけで、元素記号とは関係ない。
例えば、水素の原子記号はH、カリウムならばKである。
これと混乱し「H線は水素、K線はカリウムによる吸収」と誤認識してはならない。
フラウンホーファー線のH線もK線もカルシウムイオンによる吸収線である。



輝線スペクトル
上から、ナトリウム、水銀、リチウム、水素の輝線スペクトル
出展:Introduction to the Spectra Experiment

暗線の他に輝線も確認しておこう。
輝線とは特定の波長の光のみが飛び飛びに現れるスペクトルである。

希薄なガス体が高温状態にあるとき、その元素固有の波長の光を放つのだ。
これが輝線スペクトルとなって現れる。




つまり、希薄なガス体が特定の波長を吸収すれば暗線(フラウンホーファー線)、特定の波長を放出すれば輝線となるのである。




希薄なガス体がフラウンホーファー線を生じるか、輝線を放つかは、そのガス体の状況による。

ガス体が非常に高温で、背後に連続スペクトルがない場合は輝線スペクトルを生じる。
彩層プロミネンスコロナが放つ輝線スペクトルがこれに相当する。


ガス体の背後に連続スペクトルがある場合、ガス体は輝線スペクトルの位置に相当する波長を吸収する。
これがフラウンホーファー線となって現れるのだ。
太陽の光球はまさに、連続スペクトルを放っており、その手前にあるガスが特定の波長を吸収してフラウンホーファー線になるのである。
「手前にあるガス」には、太陽外層のガスもあれば、地球大気のガスもある。






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平山淳「現代天文学講座5 太陽」恒星社,1981 Wikipedia:Fraunhofer lines

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