水星の磁場を語る。
マリナー10号の観測で、水星が磁場を持つことが確認された。
水星ほどのサイズの惑星が磁場を持つということは、非常な驚きである。
水星の磁場の発生メカニズムは、次期探査機メッセンジャーの観測データによって究明されることだろう。
水星の磁場がなぜ、驚きであるのか?
まずは、地球の磁場発生のメカニズムから見てみよう。
地球の地下は熱い。
この熱のため、岩石がドロドロの溶岩になって対流しプレートが移動する。
温泉が湧き出るのも、地下が高温であるためだ。
地下は深いほど温度が高い。
極度の高温のため鉄もドロドロに溶けている。
この流動体の鉄でできた層を外コアという。
内コアも鉄で出来ている。
しかし、圧力が高いために、高温であるが固体になっている。
46億年前、ディスク状に集まったガスと塵から、太陽系が誕生した。
塵は凝集して小型の岩石のかたまりへと成長する。
これが微惑星だ。
微惑星は互いにぶつかり合って合体し、惑星へと成長していく。
このとき、微惑星の衝突で高熱が生じるため、惑星の表面も内部も溶岩で満たされる。
惑星の誕生初期はドロドロした流動体の火の玉なのだ。
このため、重い鉄は中心へと沈みコアを形成する。
ケイ素などの軽い元素は浮上する。
微惑星の衝突がなくなると、熱が供給されないので惑星の温度は低下する。
断熱されていないので、惑星の熱は少しずつ宇宙空間へと放射されるのだ。
地球は、表層の熱を失ったが、地下深くはまだ冷え切っていない。
地球誕生のときの余熱がまだ残っているため、地下の温度は高いのだ。
火星は小型なので、とっくに冷え切ってしまった。
だから火星には過去の火山活動の痕跡があるが、現在の火星に活火山は存在していない。
今後、数億年かけて冷えていけば、地球の火山もやがて活動を停止することになる。
コアの鉄が流動体だと磁場を生成する。
鉄は導体なので、自転の作用で電流の流れと同じ効果が生じるからだ。
これをダイナモ理論という。
ダイナモ理論が地球の磁場生成のメカニズムなのだ。
惑星がコアまで冷えて個化すると、磁場は生じない。
コアは流動体の鉄でなくてはならないからだ。
火星はコアまでコチコチに固まっているので、火星に磁場はない。
水星の表面には無数のシワがある。
これは、水星が冷えて収縮するときに生じた地形なのだ。
このことからも、水星は芯まで冷え切っていて鉄のコアは固化していることが理解できる。
本来、水星に磁場が生じる余地はないはずだ。
ところが水星には、微弱ながら磁場がある。
水星の磁場には、ダイナモ理論が通用しないのだ。
水星の磁場を説明する仮説は主に二つある。
一つ目は残留磁化だ。
鉄を磁石に付けておくと、鉄が磁気を帯びて新たに磁石になる。
これを残留磁化という。
過去、水星のコアがまだ流動体の鉄だった時代には、水星はダイナモにより磁場を生じていたはずだ。
このときの磁場が、今も固体の鉄に残留磁化となっているという説だ。
もう一つの説は、コアはまだ完全に個化していないとする説である。
コアの中に硫黄のような低融点の物質が混入しているので、コアがいまだ流動性を維持している。
このためにダイナモ理論によって水星に磁場が生じているのである、という説である。
いずれにしても、水星のコアの状態を理解することが、水星の磁場のメカニズム究明には欠かせないのだ。
水星探査機メッセンジャーでは、水星の磁場の特性だけでなく、コアの状態(固体か流動体か)を探査する計画である。