水星を語る。
太陽系の中で最も内側を回る惑星が水星である。
常に太陽の近くから離れないので、日の出直前、または日没直後しか見ることができない。
コペルニクスは生涯水星を見ることができなかったという逸話も残っている。

1974年にマリナー10号が撮影した
水星の南極付近
出展:Solar System Exploration:Mercury
水星の大きさは、地球の約3分の1程度でしかない。
水星の地形は、非常に月に似ている。
水星の表面は、ゴツゴツとした岩石質でクレーターに覆われている。
月と同様に、激しい隕石衝突の歴史を経て現在に至っている。
水星の直径は、わずかの差でガニメデよりも小さい。
ところが、水星はガニメデよりも2倍重いのだ。
ガニメデは氷と岩石が半々であるが、水星は岩石3割、鉄7割でできているからだ。
水星の公転周期は88日、自転周期は58.6日である。
公転と自転は、3:2で共鳴しているのだ。
水星を直接観測した探査機はマリナー10号しかない。
この探査によって、水星の表面はクレーターに覆われており、月に似ていることが分かった。
しかし、月面のような「海」に相当する部分はほとんどなさそうだ。
一方で、水星表面のいたるところにシワがよっている。
これは、水星が冷えていく過程で、水星全体が収縮したための地形の変化らしい。
このため、水星はコアは固体だと考えられている。
水星の重力は小さいため、気体分子を留めておくことができない。
それでも水星は極めて薄い大気を持つ。
地殻の放射性元素の崩壊によって生じたヘリウムや、太陽風によって運ばれたヘリウム、水素なのである。
水星の大気は無いに等しいため、昼夜の気温差が激しい。
昼間は400℃、夜はマイナス160℃になる。
現在までに発見された範囲では、水星は最も温度差の激しい天体なのである。
昼間は高温に達し、重力も小さいことから、水は存在しないと考えられてきた。
ところが、水星の極地のクレーターの底に氷があるらしいことが分かってきた。
水星の極地のクレーターの底には太陽光があたらないので、水は氷として存在しているようだ。
月も同様で、決して太陽光があたらない低地に氷が存在することが有望視されている。
マリナー10号は、水星には弱いながらも磁場があることを発見した。
磁場の強度は地球の1%程度しかないが、それでも太陽風の進路を変えるほどの力を持つ。
液体の鉄の中心核を持つ惑星が、高速で自転することによってその周囲に磁場が生じる。
これをダイナモ理論と呼ぶ。
水星の核は固体である。その上、自転が遅いので、これほど大きな磁場を生むとは考えにくい。
ダイナモ理論以外のメカニズムが予測されている。
水星には、プレートテクトニクスや火山活動の痕跡は見つかっていない。
マリナー10号以来、水星探査には30年間のブランクがある。
マリナー10号も水星の全表面の45%程度しか撮影していないのだ。
依然として、水星の謎は多い。
今後、NASAのメッセンジャー/MESSENGER、ESAのベピ・コロンボ/BepiColomboが水星探査に向かう。
多くの新発見がもたらされるであろう。
(詳細→水星探査を語る。)
19世紀の一時期、水星の内側を回る惑星バルカンが探索された。
現在、バルカンの存在は完全に否定されている。