水星探査機メッセンジャーを語る。
メッセンジャー[MESSENGER]は2004年8月に打ち上げられた水星探査機である。
2011年の周回軌道投入を目指している。

メッセンジャー
出展:NSSDC Master Catalog
メッセンジャー以前に水星を訪れた探査機は、1974年〜75年のマリナー10号が唯一である。
それ以来、水星は探査されていない。
メッセンジャーにより、水星は実に30年に探査されることになるのだ。
マリナー10号は水星の周回しながら、水星を観測したのではない。
太陽を公転しながら、1974年から1975年にかけて計3回水星に接近したのだ。
ところが接近のタイミングの都合で、水星の同じ側ばかりが撮影されてしまった。
このため、水星の45%程度の表面の画像しか得られていない。
人類にとって、水星の残り55%はまったく未知である。
今や水星は、8つの惑星の中で最も探査が遅れているのである。
これに対し、メッセンジャーは水星の周回軌道に投入される。
つまり、水星を回る人工衛星となって1年間、常時水星を探査するのだ。
メッセンジャーによる探査の範囲は水星の全面に及ぶ。
一方で、水星の周回軌道投入を目指すため、メッセンジャーは地球で1回、金星で2回、水星で3回のスイングバイを実施する。
地球-水星間は最短で1億キロだが、スイングバイを実施するためにメッセンジャーは79億キロに及ぶ距離を航行する。
(詳細→水星への道のりを語る。)
この周回軌道からの探査を通じて遂行されるメッセンジャーの主要な任務は以下の6項目である。
- 水星はなぜ高密度なのかを解明する
- 水星の地質学的な歴史を解明する
- 水星のコアの構造と状態(流動体か固体か?)を解明する
- 水星の磁場の特性を解明する
- 水星の極地域に存在する物質(氷?)を解明する
- 水星の極めて薄い大気の成分と起源を解明する
これら任務を達成するための主役が、MDIS、GRNS等の8つの観測機器である。
測定機器は、メッセンジャーの機体のペイロードに格納されている。
(詳細→メッセンジャーの観測機器を語る。)
メッセンジャー自体の位置・姿勢を認識するシステムも強力だ。
目印をなる恒星を捕捉するスタートラッカー、4機のジャイロスコープ、4機の加速計、さらにバックアップ用に6機のソーラーセンサーがメッセンジャーに搭載されている。
メッセンジャーの中枢がIEM[integrated electronics module]だ。
IEMは25MHzのメインプロセッサと10MHzのサブプロセサから構成されており、メッセンジャーの頭脳に相当する。
観測機器やサブシステムの制御はIEMによって統括される。
メッセンジャーが他の惑星探査機と決定的に異なるのは、耐熱性能である。
水星は太陽に近いため、地球に比較し11倍の輝きがある。
このような太陽エネルギーをモロに受ければ、メッセンジャーの制御回路はまともに動作しなくなってしまう。
メッセンジャーは、太陽の側をセラミック製のサンシェードで覆うことによって、機体の温度上昇を抑えている。
サンシェードの表面は450度の高熱にさらされるが、サンシェードに保護されたペーロード内は室温に保たれる。
メッセンジャー[MESSENGER]は[MErcury Surface, Space ENvironment, Geochemistry, and Ranging(水星の地表・宇宙環境・地質化学および測定)]の略である。
| ※メッセンジャーが撮影した水星の写真はここ※ |