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秤動を語る。

日本では、の模様をウサギに見立てる風習がある。
諸外国では「女性の顔」「カニ」「ロバ」をイメージする地域もあるようだ。
これは、地球から見た月の表面の模様がいつも変化しないからである。


月は自転周期と公転周期がピタリ一致している。
潮汐作用のため、自転と公転が1:1になってしまったのだ。
このため、月は常に同じ面を地球に向けていることになる。
月の地球に向いた面を表側、地球からは決して見えない面を裏側と呼ぶ。


このことから、月の全表面の50%は絶対に見えないと考えがちになるが、そうではない。
月は地球に対する向きをわずかに振るので、長期にわたり丹念に観測すると月の全表面の59%程度を見ることができる。
地球から絶対に見えない領域は約40%程度なのだ。


地球に対する向きがわずかに、ゆっくりと振られる現象を秤動という。
「秤」とは「てんびん」のことである。
てんびんが支点を中心にして、往復運動する様子に例えているのである。
秤動を「首振り」と表現する場合もある。


秤動の原因は3つある。
経度による秤動緯度による秤動日周秤動である。



経度による秤動

ケプラーの法則は月の公転にも適用される。
つまり、月が地球を公転する軌道は楕円であり、地球はその焦点にある。(第一法則)
この楕円軌道はかなりつぶれていてるので、地球-月間の最小距離と最大距離の違いは14%にも及ぶのだ。


ケプラーの第二法則では、公転する惑星は近日点では速く、遠日点ではゆっくりと進む。
月の場合も同様で、近地点と遠地点では公転するスピードが変化する。

 距離公転速度
近地点35万6410km時速3978km
遠地点40万6740km時速3499km
違い14%14%


一方で、月の自転速度は変わらない。
ということは、月は遠地点では自転よりも速く公転し、近地点では自転よりも遅く公転することになる。
「自転と公転のスピードがピタリ一致している」というのは誤りなのだ。


月が遠地点へ向かうとき、公転のスピードが落ちていく。
このとき自転速度は一定なので、自転が相対的に速めになり月は東端を向けようとするのだ。
近地点に向かうときは、公転のスピードがアップするので月は西端を地球に向けようとすることになる。


このような月の東西方向の秤動を「経度による秤動」と呼ぶ。



緯度による秤動

地球の公転軌道面を黄道面という。
地球の自転軸はこの黄道面に対して23.5度傾斜してことから、一年を通じて太陽の南中高度が変化し、日本のような中緯度地方では四季の変化が生じるのだ。


仮に、太陽から一年を通して地球を観測したとしよう。
23.5度の傾斜の影響で、地球の南極地方がまったく見えない時期と、北極地方が完全に隠れてしまう時期があることが確認できるはずだ。
つまり太陽から見れば、地球が23.5度の地軸の傾斜のため南北方向に秤動していることになる。


月の自転軸も黄道面に対して1.5度程度傾斜している。
この1.5度のため、月は南北方向に秤動するのである。
23.5度に対し、1.5度はいかにも小さい。
このため、目視ですぐ分かるほど月面の模様は変化しないのだ。


さらに月の公転軌道面(白道)は、黄道面に対し5.15度傾いている。
このため、月が白道を一周する間に、月の南極側が見やすい時期と北極側が見やすい時期が反復することになる。


月に自転軸の傾斜(1.5度)と白道の傾斜(5.15度)による南北方向の秤動を「緯度による秤動」と呼ぶ。



日周秤動

遠方の場所までの距離を測定する場合、三角測量を利用する場合がある。
離れた二地点から個別に目標物を見て、角度の違いから目標物までの距離を算出する測量の方法が三角測量だ。


月の出、月の入りを利用すれば、月も三角測量することができる。
月の出のときと、月の入りのときでは、観測地点は自転によって地球の直径分隔たったニ地点になるので、異なった角度から月を眺めることになるのだ。


このことは、月の出のときと、月の入りのときに月の見える面がわずかに異なることを意味する。
このように一日のうちで、月の見かけ方向が変わ秤動を「日周秤動」と呼ぶ。





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参考文献・サイト

白尾元理「月のきほん」誠文堂新光社,2006
Wikipedia「Libration」

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