ホーキング織野の

サラリーマン、宇宙る。

OCOを語る。

OCOとは

OCOは、地球上の二酸化炭素の循環を観測する衛星である。
二酸化炭素をモニターする衛星としては、日本の「いぶき」に次いで二番目に打ち上げられる予定だった。




OCOと二酸化炭素

大気中の二酸化炭素(CO2)が増加すると、地表の平均気温が増加する。
これは、地表から宇宙へ向けて逃げていくはずの熱を二酸化炭素が吸収し、さらに地表へ戻してしまうからである。
このような働きを温室効果という。
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温室効果によって、平均気温が上昇すると大気や海流の循環が変るので、地球規模で気候が変動してしまう。
このため、漁獲量や農業生産量が打撃を受け、生態系が破壊される。



このような状況を少しでも回避するためには、二酸化炭素の排出を減少させることはもちろん、大気中での二酸化炭素の分布や動きをモニターし、今後の気候変動を予測する必要がある。




OCOミッション

人工衛星を使用して地球環境を観測するNASAのプログラムがESSPだ。
それぞれ、役割が異なる人工衛星を複数利用して地球を観測する。

OCOの任務は、ESSPの一員として、二酸化炭素の量、分布を調査することである。



地球が温暖化していることが確認されており、その原因は二酸化炭素の増加によるという見方が強い。
温暖化すれば、海流が変わり、気流が変わり、降雨量に影響する。



大気中の二酸化炭素の動向は、気候変動に大きな影響を与えるのだ。
将来の気候を正確に予測に予測し、対策するためには、二酸化炭素の量、分布、循環を正確に測定しなくてはならない。


二酸化炭素をモニターするOCO
出典:JPL OCO



大気中に二酸化炭素をもたらす原因は、人間の産業活動だけだとは限らない。
生物の呼吸や腐敗、火山活動によっても二酸化炭素は供給される。



自然界にはまた、二酸化炭素を吸収するプロセスもある。
植物は光合成のために二酸化炭素を吸収するし、海洋も二酸化炭素を吸収する。



このような地球規模での二酸化炭素の動向を炭素循環という。



炭素循環をモニターするための観測施設は地表にも展開されているが、海洋上の測定には限界がある。
そこで、OCOは衛星軌道から、地球全体の炭素循環をモニターし、地表の観測施設のデータとマッチングすることによって、炭素循環を正確に調査する。




Aトレイン

OCOは、クラウドサットカリプソ、アクア、パラソル、オーラとともにグループを作る。
これら衛星6機のグループは、連結された鉄道車両のように、列となって同一の軌道を周回する。
このフォーメーションをAトレインという。


OCOはA-トレインのメンバーである。
先頭がOCOだ
出典:JPL OCO



Aトレインの軌道は高度705kmの太陽同期軌道だ。



Aトレインの各衛星は至近距離を維持したまま周回する。
それぞれの衛星で同時に撮影した画像を重ね合わせるためである。




OCOの観測機器

OCOはどのようにCO2をモニターするのか?

太陽光線は地表や海水面で反射して宇宙空間へと戻っていく。
OCOはこの地球で跳ね返ってきた太陽光線をキャッチする。



大気圏を通過する太陽光線の一部は、酸素分子やによって特定の波長が吸収される。
大気中の二酸化炭素の量が多ければ、吸収される太陽光も多くなる。
そこで、OCOは二酸化炭素によって吸収される波長の強度を測定し、大気中の二酸化炭素の量をモニターするのである。



OCOの観測機器
出典:JPL OCO





二酸化炭素が吸収するのは、太陽光線の中のごく一部の波長だ。
OCOは、地表や海面から戻ってきた太陽光線の中から、二酸化炭素による吸収量だけを分離して測定しなくてはならない。



そのためには、OCOに戻ってきた太陽光線を、まずスペクトルに分解する。
これに使用するのが回折格子だ。



光をスペクトルに分解する部品と言えば、まずプリズムを思い出す。


出展:The Department of Physics and Astronomy,The University of Iowa




技術的には、プリズム以外にも光をスペクトルに分解する手段がある。
それが回折格子である。
細かな溝や穴のある面で光が反射すると、スペクトルが現れる。


回折格子による光の分解
出典:JPL OCO




CDやDVDの表面がキラキラと虹のように光るのがこの原理だ。



OCOでは、スペクトルに分解された光の中から、二酸化炭素による吸収を見つけ出し測定するのである。
測定器に他の熱が入り込むことは許されない。
測定誤差の原因になるからである。



このため、OCOには冷却装置が搭載されている。
これにより、OCOの検出器はマイナス150度Cに維持されている。





OCOの観測モード

OCOは、状況に応じてナディアモード、グリントモード、ターゲットモードの3つの観測モードを使い分ける。



OCOの真下を観測するモードがナディアモードだ。
ナディア[nadir]には、天底・真下という意味がある。



海洋上で効果を発揮するのが、グリントモードである。
これは、海面で反射した太陽光を直接モニターするモードである。
グリント[glint]には、きらめくという意味がある。



ターゲットモードは、目標とする地点を連続してモニターするモードである。
ターゲット[target]は、標的という意味だ。




OCOの構造

OCOはオービタルサイエンス社によって開発された。
太陽観測衛星ソース[SORCE]紫外線天文衛星ギャラックス[GALEX]と共通の衛星バスだ。
小型の衛星のためタウルスロケットで打ち上げられる。

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参考文献・サイト

NASA:OCO
JPL:Missions
NASA:Earth
A-TRAIN CONSTELLATION

2008/03/21



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