レゴリスを語る。

月に記されたオルドリン氏の足跡。
出展:NASA
人類が月に記した足跡の写真は有名だ。(左の写真)
このような足跡が残るのは、月の表面が砂に覆われているからだ。
月面を覆っている砂をレゴリスという。
高地で10〜15m程度、平地(通称「海」)で4〜5m程度のレゴリスが堆積している。
月には大量のレゴリスが存在しているのだ。
月にレゴリスが満ちているというのは、奇妙な話である。
地球の砂は、風雨や川、海によって岩が削られて作られたものだ。
これを侵食作用という。
侵食が進むほど、砂は細かくなり、量も増えていく。
ところが、月には大気がない。川もない。
侵食が起きようもないのだ。
ところが、月面には砂(レゴリス)がある。
侵食がないのに、どうして大量の砂(レゴリス)が月面にあるのだろうか?
レゴリスは宇宙塵(うちゅうじん)や太陽風の直撃によって生じたのだ。
宇宙塵は50ミクロン程度の微粒子だ。
この宇宙塵が地球大気に突入すると過熱され流星になる。
ところが、月には大気がない。
宇宙塵は燃え尽きることなく秒速10kmで月面に衝突する。
宇宙塵の直撃によって、岩石が加熱されて揮発しすぐに固化する。
こうしてレゴリスができるのだ。
太陽風の直撃によっても同様にレゴリスが生成される。
月は常に宇宙塵や太陽風の直撃にさらされている。
レゴリスは、月の歴史を通して常に生成され続けているのだ。
だから、古い地形(高地)には厚く、新しい地形(海)には薄くレゴリスが堆積しているのだ。
このようにレゴリスは、地球の砂とは起源がまるで違うのだ。当然性質も大きく違う。
レゴリスは非常に細かく、宇宙服や機器類にも付着しやすい。
これらのスキマにも侵入しやすい。
2004年、米国が新宇宙政策を発表した。
2020年には月面での長期滞在が実現され、その月面基地を足場に2030年には火星の有人探査を成功させるというのだ。
新宇宙政策は非常に壮大なビジョンなのである。
この新宇宙政策を進めるためには、まず月面の砂(レゴリス)を知り尽くさなくてはならない。
砂が機器類に侵入すれば誤動作の原因になりうるし、建設資材や宇宙服に入れば気密を保てなくなるだろう。
レゴリスは月面基地建設と長期滞在にとって大きなネックになっているのである。
「1粒混入したので、空気が漏れました」では済まされない。
レゴリスを「たかが砂」とあなどることはできないのだ。
レゴリスの性質の解明と対応策は新宇宙政策にとって不可欠な基礎なのである。
これをおろそかにすれば、火星を目指す壮大なビジョンも、砂上の楼閣となってしまうだろう。