ホーキング織野の

サラリーマン、宇宙る。

宇宙線を語る。

トップページ宇宙論の目次宇宙線

宇宙線とは

宇宙空間は真空と思われがちだが、そうではない。
宇宙空間には、陽子やアルファ粒子(ヘリウムの原子核)が高速で飛び交っている。
これらを宇宙線(正確には一次宇宙線)という。



一次宇宙線の大部分(90%)は陽子である。
8%がアルファ粒子(ヘリウムの原子核)、残りが電子や軽い元素のイオンだ。



高速で飛ぶ荷電粒子を放射線という。
宇宙線は放射線の一種なのである。
宇宙線を「宇宙から飛来する高エネルギー荷電粒子の総称」と表現することもできる。



一次宇宙線が高速が地球の大気圏に突入すると、高度数十キロメートルで空気中の窒素や酸素の原子核に衝突する。



元々、宇宙線の持つエネルギーは大きいので、ぶつかっただけでは済まされない。
核反応によって放射性同位元素が生成する場合や、中性子や陽子が弾きだされてしまう場合がある。
パイ中間子、ミュ−粒子が生成されることもある。



一次宇宙線の衝突によって生成された中性子、陽子、パイ中間子、ミュ−粒子も高エネルギーを持っている。
これらを二次宇宙線という。



「一次宇宙線が大気中に入ると二次宇宙線に名前が変わる」のではない。
一次宇宙線との衝突によって生成される放射線が二次宇宙線なのだ。



二次宇宙線はさらに、他の粒子を高速の粒子に変えていく。
このようなプロセスが繰り返されて、多くの粒子が地上へと達する。
この現象を空気シャワーと呼ぶ。




一次宇宙線

一次宇宙線とは

宇宙空間を飛ぶ放射線が一次宇宙線だ。
一次宇宙線のうち、太陽から放射されるのが太陽宇宙線、超新星爆発に由来するのが銀河宇宙線である。




一次宇宙線の種類

宇宙線は中性子星超新星が起源である。
白色矮星も宇宙線を放っていることが、埼玉大とJAXAによって確認された。




超新星残骸と銀河宇宙線の起源

一次宇宙線のうち、銀河系内に起源を持つ宇宙線を銀河宇宙線という。
銀河宇宙線がどこでどのように発生するのかは、長年の謎であった。



超新星残骸RX J1713-3946を観測したエックス線天文衛星チャンドラと すざくのデータから超新星が爆発した後も宇宙線が加速され続けていることが確認された。




二次宇宙線

二次宇宙線とは

地球の大気圏に突入した一次宇宙線が、空気中素の原子核に衝突して生成した放射線が二次宇宙線である。

二次宇宙線は、地表にも到達する。
毎秒100個程度の二次宇宙線が人体を貫いている。




空気シャワー現象

二次宇宙線も高エネルギーを持っているため、進路上の原子核に衝突し、別の放射線を生成する。
この放射線もさらに別の放射線を生成する。
このように二次宇宙線が次々に生成されていくプロセスを空気シャワー現象という。

大気シャワー現象では、パイ中間子等の粒子が出現することもある。



二次宇宙線は地球大気の中で発生したものである。
地上に到達する宇宙線はすべて二次宇宙線である。
一次宇宙線が直接地上に達することはない。





宇宙線の観測方法

一次宇宙線を観測するためには、大気の高層や宇宙空間で直接観測するしかない。
このためには、バルーン、人工衛星が利用される。



空気シャワーは、地表の設備で検出される。
場合によっては高山で行われる観測もある。




宇宙線の発見と研究の歴史

宇宙線を発見したのはオーストリアの物理学者ヘスである。
ヘスは、高度と空気の電離を調べていた。



気球で上空に行くに従い、空気の電離度は低下する。
ところが、ある高度より上になると、空気の電離度は急に高くなる。
つまり、空気を電離させる放射線は、上空ほど多いのだ。



このことは、放射線が宇宙から来ていること意味している。
これが宇宙線の発見である。
1912年のことであった。



しばらくの間、宇宙線の正体は不明であった。
宇宙線の正体を探る過程で、アンダーソンは陽電子とミューオンを発見した。



宇宙線の飛来する方向を観測すると、西から来るものは多いが東から来るものは少ない。
これは宇宙線がプラスの電気を帯びていることを示している。



地球は磁場を持っている。
帯電した粒子が磁場中を進むと、この粒子は磁場から力を受けてカーブする。
カーブの方向は帯電がプラスかマイナスかで逆になる。
宇宙線がプラスであるから、地球磁場の影響を受け、宇宙線が西から来るようにカーブするのである。



乾板による観測が進むと宇宙線が、様々なプラス電荷を持つことが分かった。
これは、宇宙線が単一のプラス粒子ではなく、単位となるプラス粒子が複数集まっていることを示している。
このことから、宇宙線の正体が様々な元素の原子核であることが分かったのである。





宇宙線と月探査

地球に来る宇宙線は地球大気と磁場で遮られる。
ところが、月面には大気も磁場もない。
つまり、月面では宇宙線が多く降り注ぐことになる。



しかし、月面や月周辺の空間にどれくらいの宇宙線があるのか、詳細なデータは得られていない。
将来の長期滞在による月探査のために、宇宙線のデータは重要である。
LROなどの月探査ミッションでは、宇宙線の測定が計画されている。





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参考文献・サイト

やさしい物理教室:宇宙線
JAXA:超新星残骸
東京大学宇宙線研究所
高エネルギー加速器研究機構
Telescope Array Project
Cosmicopia:Cosmic Rays
BESS
ISAS
What are Cosmic Rays?

2008/03/26
2009/03/21



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