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藤井旭の天文年鑑―スターウォッチング完全ガイド〈2011年版〉
藤井 旭
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暗黒星雲を語る。

トップページ銀河系の目次恒星の進化暗黒星雲

暗黒星雲とは

見えない星雲

宇宙空間は真空ではない。
希薄ながらも、水素分子や星間塵(せいかんじん)や星間ガスが漂っている。



これらは、均一な濃度で宇宙に分布していない。
星間塵や星間ガスが濃い領域もあれば、薄い領域もある。



一般にガス星雲と呼ばれているのは、水素分子や星間塵が濃い領域をいう。
正確には、星間雲(または星間分子雲)と表現する。



恒星の影響を受けている星間雲は目で見ることができる。
星間雲が恒星の光を反射したり、水素分子が電離して発光するからだ。
このように目に見える星間雲が、散光星雲惑星状星雲となる。



一方、恒星の影響を受けない星間雲は、反射も電離もしないので見ることができない。
このような見ない星間雲を暗黒星雲という。

見えない暗黒星雲光を吸収するので見えない。
見える散光星雲輝線星雲恒星の光を受け、水素原子が電離し発光する。
反射星雲恒星の光を反射する。
惑星状星雲白色矮星の光を受け、
その周囲を囲むガスが発光する。
超新星残骸超新星爆発で飛び散った物質が、
周囲のガスと衝突し発光する。



暗黒星雲が見えるとき

暗黒星雲は見ることができない。
しかし、暗黒星雲の背後に、光源があると暗黒星雲が影絵として浮かびあがる。
光源とは、散光星雲銀河などだ。



たとえば、馬頭星雲は、散光星雲の手前にあるため、シルエットとして浮かび上がって見えるのだ。
コールサックは、天の川の手前にある。



暗黒星雲
M16内部の暗黒星雲
出展:NASA:Hubble Site



しかし、暗黒星雲そのものは背後の光を吸収してしまう。
したがって、暗黒星雲の裏側を見ることはできない。



暗黒星雲と星の誕生

恒星はこの暗黒星雲の中で誕生する。
暗黒星雲は恒星の進化の出発点でもあるのだ。



暗黒星雲の濃い部分は、密度が高いため自分の重力で収縮していく。
収縮すると暗黒星雲の密度がさらに高くなるので、収縮も加速する。
収縮が過度になると、原始星を経て、やがて中心で核融合反応が起こる。



これが恒星の誕生だ。
誕生直後の原始星を見ることはできない。
暗黒星雲に取り囲まれているからだ。



恒星は誕生すると核融合反応で光や紫外線を放つ。
この紫外線によって周囲の暗黒星雲を構成する水素分子が電離される。



電離された水素分子は光を放つため、見えないはずの暗黒星雲が今度は光輝くようになる。
これが散光星雲(正確には輝線星雲)だ。
輝線星雲は別名HII領域ともいう。



なお、星間雲が電離して輝けば輝線星雲、電離せずに恒星の光を反射したものを反射星雲である。
反射星雲と輝線星雲を合わせて散光星雲という。



輝線星雲の温度は高いため、ガスは活発に動きまわる。
このため、輝線星雲はどんどん広がろうとする。
この動きが周囲の暗黒星雲を圧迫し、密度を高めるため新たな恒星の誕生がさらに促されることになる。



したがって、恒星が単独で誕生することは、まずない。
恒星は集団で誕生するのだ。
散開星団やアソシエーションといったグループが、若い恒星から構成されるのは、このような理由によるのである。



暗黒星雲の例

コールサック

みなみじゅうじ座ケンタウルス座はえ座に広がる暗黒星雲である。
天の川を背景としているのでシルエットのように浮かび上がって見える。



馬頭星雲

オリオン座にある暗黒星雲である。
太陽系から約1500光年である。
背後に散光星雲があるために、手前にある暗黒星雲が馬の首のような形に浮かび上がっている。



バーナード・カタログ

メシエは、星雲・星団のカタログをまとめた。
これがメシエ・カタログだ。


同様にバーナードは暗黒星雲のカタログをまとめた。
これをバーナード・カタログという。


メシエ・カタログ中の天体は「M」を付けて呼ばれる。
例えば、メシエ・カタログの31番は「M31」となる。

バーナードカタログ中の天体は「B」を付けて呼ばれる。
バーナードのイニシャルの「B」だ。
Bで始まる数字は、暗黒星雲だと思っていい。
[..さらに詳しく見る..]





暗黒星雲の分布と銀河

銀河系

暗黒星雲は銀河の円盤面(ディスク)に沿って分布する。
それは、我々の銀河系他の銀河も同様である。



ハーシェルは、天球の各領域にある星の数を調査し、恒星が円盤状に分布していることを発見した。
これが銀河系の発見である。



ハーシェルは遠方の恒星が暗黒星雲によって隠されていることは分からなかった。
このため、ハーシェルは銀河系の広がりを小さく見積もり、太陽系銀河系の中心付近にいると判断した。



後年、シャプレーが球状星団の分布の様子から、銀河系のサイズがハーシェルの予測より大きいことを見出した。



銀河の円盤面の暗黒星雲は光を遮るので、銀河系の中心付近から向こう側を観測することができない。
しかし、暗黒星雲は光を通さなくても、マイクロ波は通過させる。
このため、水素が出すマイクロ波を観測することによって、銀河系の渦の状態が分かるようになった。




黒眼星雲

かみのけ座M64は、黒眼星雲と呼ばれている。



M64渦巻型銀河であるが、明るい中心核の手前に大きな暗黒星雲の領域を持っている。
このため、光学観測ではM64は黒眼のように見えることから黒眼銀河、または黒眼星雲と呼ばれるようになった。

黒眼星雲M64(メシエ64)
黒眼星雲M64
中央部に暗黒星雲の領域を持っている。
出展:APOD



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