ホーキング織野の

サラリーマン、宇宙る。

太陽活動周期を語る。

トップページ太陽系の目次太陽太陽活動周期

太陽活動周期とは

太陽の輝きはいつも一定のように思える。
季節によって太陽熱が変化するが、それは地球の自転軸の傾きの問題であって、太陽そのものの変化ではない。
太陽は、変わることなく同じ状態にあるようだ。



ところが、望遠鏡や電波望遠鏡で観測すると、太陽の状態は約11年で周期的に変化することが分かっている。
これを太陽活動周期、またはソーラーサイクルという。
周期の長さは一定ではなく、約9年から11年程度の間で伸縮する。



例えば、太陽黒点の数は約11年を周期として増えたり減ったりを繰り返すのである。
黒点が増えると、フレアプロミネンスも増加する。



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太陽活動の何が周期的なのか?

ウォルフ黒点相対数

太陽の活動の度合いを示す指標がウォルフ黒点相対数である。
黒点は群を作って発生する。
黒点の総数と群の総数を使って求めた値がウォルフ黒点相対数だ。



ウォルフ黒点相対数は過去250年間に渡って計算されている。
ウォルフ黒点相対数のグラフを見ると、太陽活動が見事な周期性を持っていることが確認できる。



太陽活動周期
太陽活動の周期
この図から太陽が周期的に活動することが読み取れる
出展:NASA:Wikimedia Commons



太陽活動が活発な時期には、黒点が増加する。
太陽活動の停滞期には、黒点が減少する。
このような黒点数の増減が11年周期で繰り返されるのだ。




蝶形図

黒点の周期性は数だけでなく、出現する緯度にも表れる。
黒点は太陽表面にまんべんなく出現するのではない。
太陽活動に応じて、出現する緯度が変化するのだ。



太陽活動の下限を過ぎたころは、黒点は北緯35度、南緯35度付近に多く出現する。
太陽活動が活発期に向かうにつれ、黒点の数が増えながら出現の中心は場所は北緯20度、南緯20度付近へとシフトする。



太陽活動の停滞期に差し掛かると黒点は赤道近辺に発生するが、下限を過ぎれば、黒点の出現場所は再び北緯35度、南緯35度付近にジャンプしたように突然戻る。



蝶形図
蝶形図
蝶形図からも太陽が周期的に活動することが読み取れる
出展:Solar Physics

この様子を図示したグラフを蝶形図という。
蝶がハネを広げたように見えるからだ。
またはバタフライ・ダイアグラムとも呼ばれている。



蝶形図からも太陽が11年の周期で活動していることが読み取れる。




その他の活動周期

11年の周期で変化するのは、黒点のみではない。
同時にフレアプロミネンスCMEコロナホールも変化する。
黒点をはじめ、これらは皆磁気に関した現象だ。



太陽活動周期は、磁気の状態の変化によって、太陽の表面に現れた現象なのだ。
したがって、太陽に中心部で起こっている核融合反応が、11年周期で変動していることはない。



太陽活動周期の1サイクルごとに、太陽の磁極は交互に反転する。
つまり、太陽の南北は約11年ごとに入れ替わるのだ。
磁極が反転し、さらに元に戻るまで2サイクルを要することになる。
磁極の方向で考えれば、太陽活動周期は22年と考えることもできる。



一定と考えられていた太陽定数も、太陽活動周期に合わせて、0.1%程度で変動する。



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太陽活動周期の番号

太陽活動周期には番号が付けられている。
1755年に始まった太陽活動周期をサイクル1と決め、以後、極小から次の極小までの期間を単位サイクルとしてカウントしていくのだ。
2000年前後にピークを持つサイクルがサイクル23である。

2008年1月から、サイクル24が始まった。



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太陽活動周期の発見の歴史

太陽活動周期は元々、太陽面の状況を記録していたハインリッヒ・シュワベ(1789-1875)によって発見された。



当時の天文学界では、水星の内側に未知の惑星が存在すると確信され、新惑星発見を目指す探索レースが加熱していた。
この未知の惑星をバルカンという。
ハインリッヒ・シュワベもバルカン探しに気合を入れた人物の一人であった。



バルカンは内惑星であるので、太陽面を通過する機会があるはずだ。
ハインリッヒ・シュワベは、バルカンの太陽面通過のタイミングをキャッチしようと考えた。
そのため、ハインリッヒ・シュワベは、1826年から〜1843年までの17年間に渡り太陽の表面の記録を続けた。



バルカンは実在しなかったが、ハインリッヒ・シュワベは、バルカン探索の徒労と引き換えに、太陽黒点の数が約10年の周期で増減することを発見した。



その後、ウォルフがこの周期性に興味を持ち、1610年代に遡って、黒点観測のデータを収集した結果、シュワベが約10年とした太陽活動周期を11.1年と補正した。



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太陽活動周期と宇宙天気予報

太陽活動周期のピーク時には、フレアCME(コロナ質量放出)が増加し、エックス線ガンマ線、高エネルギーの荷電粒子が大量に放出される。



高エネルギーの荷電粒子が地球圏に到達すると、地球の磁気が影響を受ける。
この結果、デリンジャー現象磁気嵐、オーロラが発生する。
大規模な磁気嵐になると、送電線に誘導電流が流れるため、送電システムに悪影響が及んでしまう。



さらに磁気嵐は、人工衛星に搭載された電子機器を損傷させ、無線通信に障害を発生させる。
また船外活動を行う宇宙飛行士にも危険が大きい。



このようなことから、太陽を観測し、荷電粒子の地球到達や磁気嵐の発生の予報が重要になってきた。
このような活動を宇宙天気予報という。
太陽活動周期のピーク時には、宇宙天気予報が重要になるのは言うまでもない。



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太陽活動周期と大気

太陽活動周期のピーク期には地球の大気圏が膨張する。
つまり、大気の範囲が広くなるのだ。



人工衛星の中には、低い軌道のものもある。
このような人工衛星は、極めて薄い空気の抵抗を受けながら地球を周回する。
この抵抗が長い年月の間に累積し、人工衛星の高度を徐々に下げてしまうのだ。



太陽活動周期のピーク期には、大気の膨張により抵抗が増す。
人工衛星の下降量が多くなるのである。



スカイラブは米国初の宇宙ステーションである。
スカイラブのが打ち上げられたとき、太陽活動と大気の関係が分かっていなかった。



3回に分け計9名のクルーが滞在したあと、予算凍結のためスカイラブは無人になっていた。
この間、スカイラブの高度は徐々に低下していたが、NASAは、やがて実用化されるスペースシャトルを利用してスカイラブの高度を上昇させようと考えていた。



ところが、スカイラブの降下スピードが予想以上に速くなった。
スカイラブが受ける空気抵抗が急激に増えたためだ。

この原因を究明する過程で太陽活動と大気の膨張の関係が明らかになったのだ。



1979年、スペースシャトルの実用化を待たずに、スカイラブは南太平洋に落下した。
スペースシャトルの初フライトはこの2年後であった。

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参考文献・サイト

野田昌宏「宇宙ロケットの世紀」NTT出版,2000
Solar Physics
World Book at NASA:Sun
Imagine the Universe!:The Sun
Stanford Solar Physics Research Group
NASA Polar, Wind, and Geotail Projects

2008/08/16



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