彩層を語る。
太陽のギラギラと光輝く部分を光球という。
その周囲を取り囲む薄いガスの層が彩層[chromosphere]である。
彩層の厚さは2000から3000km程度である。

皆既日食時の彩層
出展:Andrew Lowe's Minor Planet Home Page
この彩層の外側に広がるのがコロナだ。
彩層とコロナの間には、転移層という薄い層がある。
彩層は赤い色をしているが、光球の光が強すぎるため通常は肉眼で見ることはできない。
皆既日食のときには、光球の光が月によってシャットアウトされるので、月のシルエットの周囲に彩層を確認することができる。
彩層は非常に高温である。
このような高温のもとでは、水素原子は波長656.281nmの光を放つ。
この光はHα線ともいい、赤い色をしている。
彩層の赤い色は、このHα線の色なのだ。
Hα線のみを透過するフィルターを用いれば、日食時でなくても彩層を観測することができる。
彩層を見難くする余分な光がカットされるからだ。

Hα線で撮影した太陽、見えている像が彩層
出展:Osservatorio Astronomico di Roma
彩層の温度分布は興味深い。
光球表面の温度は6000Kである。
光球表面から500kmの高さでの彩層の温度は4500Kである。
ここが彩層で最も低温な場所なのだ。
さらに光球表面から2000kmの高さでは、彩層の温度は20000Kに達する。
彩層の表面からは、ガスがスパイク状のトゲトゲとなって噴出している。
これをスピキュール[spicules]という。
スピキュールは炎のようにユラユラと揺れ動くように見える。
スピキュールの高さ1万kmにも達する。
ガスは秒速30km位で吹き上げるが10分程度しか持たない。
持続時間の短い現象なのだ。
彩層は非常に活動的なエリアである。
フレアやプロミネンスは彩層で発生する。
ヘリウム発見のきっかけとなったのは、彩層の光であった。
インドで皆既日食を観測していたヤンセン[Pierre Janssen]が、彩層のスペクトルの中に587.49ナノメートルの波長を確認した。(1868年8月)
この波長はナトリウムのスペクトルに近い。
そのため、当初は彩層中にナトリウムが存在すると予測された。
その約2か月後、ロッキー[Norman Lockyer]が太陽スペクトル中に、同じ波長を確認した。
この波長は、それまでに知られていたどの元素のスペクトルとも一致していない。
このことからロッキーは、未知の元素が太陽だけに存在し、その元素が587.49ナノメートルの波長を放っていると考えた。
この未知の元素はヘリウムと名付けられた。
ヘリウムは、太陽を意味するギリシア語ヘリオス[helios]に由来する。
なお、ヘリウムが持つ587.49ナノメートルの波長にはD3線と名前を付けた。
すでに知られていたナトリウムのD1線、D2線に波長が近いからである。
1895年、ラムゼー[Ramsay]がクレーブ石(ウラン鉱石の一種)からD3線を放つガスを分離し、後日それがヘリウムによるものであることが判明した。
太陽の名を持つ元素ヘリウムは、地球上でも確認されたのである。